狂気
「人を殺すのは簡単だ。」
そう、師が言った。いつもと同じ言葉。違うのはそれが最後の言葉だということ。
「己を殺すのもまた、簡単だ。」
拾われたそのときから聞かされ続けたその言葉。
「だが・・・」
その後の言葉はなかった。
師は死んだ。
「どうしてぇ。」
少女に出会った。
「何でぇ。」
少女は女になっていた。
「忘れたい・・・忘れられない・・・忘れちゃいけないのよ!!」
不思議な、変な言葉を女は少女のときから言っている。
忘れたいのなら忘れればいい。 そう言ったら、頬が熱くなった。
「あんたのせいで!!」
女は目に水をためていた。
その言葉の意味も、目の水の意味もわからなかった。 ただ、師、以外に殴られたのだとはじめてわかった。
悲しいなどと、悔しいなどと、未だにそのような感情を持つ人間がいたことに驚いた。
出会ってきた生き物たちはどれも欲に溺れた汚い生き物だったからかもしれない。
師ですらも、こんな感情を持ち合わせてはいなかった。
そしてもちろん己自信も。
感情は初めから持ち合わせてはいなく、この心はあまりにも血を浴びて。
仕方がないだろう?生きるためなのだからと誰かが言っている。
それは私なのだろうか、それとも違う人間なのだろうか。
少女は涙をながし続けながら私の胸板を叩き続けている。
可哀想に。あの時、一緒に死んでいれば泣かないですんだろうに。
高く高く手を振り上げる。その手にはナイフ。
早く速く降り下げる。その手にはナイフ。
「あ」
少女が気付く前に少女を殺そう。
思う前に体は動いている。少女は死んでいる。
「はははははははははは!!!!!!!」
笑う笑う。
おかしくてしょうがない。
私は壊れているのですか?
私を壊したのは誰ですか?
私は師を越えたのだ。
師が言った言葉は何だっけ?
そんなものはもうどうでもいい。
ただ、私は依頼されたことを淡々とこなす人形。
だった。
人形は思考はいらない。何と楽なことだろう。
なんと欲にまみれた姿なのだろう。
だがそんなものとはもう縁がない。
私は少女をこの手で殺したのだから。
依頼されていないものを殺したのだから。
私のために殺したのだから。
嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい。
きっと私は人間ではなくなったのでしょう。