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/幹也
どこまでも青い空、ほんのわずかにある白い雲、広くどこまでも続く大地。
太陽は大地をすみずみまで照らし、僕らに温かみを分け与えてくれる。
本当、直接見ていないのに太陽の光はとても眩しい。
そんな中、僕こと黒桐幹也はいたって普通の格好をしていた。
黒髪に黒ぶち眼鏡。その黒で統一している服装を見て橙子さんはいつか、
「君は少しぐらい流行を追ってみてはどうなんだ?見ていてどうかと思うのだがな」
と言っていたけれど、変える気は全くない。
僕の周りにいるのは三人。
式、鮮花、そして浅上さん。浅上さんが来ている事以外はいつもと同じだ。
その式、彼女は既に羽織っていた上着を右手でかかえていて、かなりと言うか……。
「幹也」
式は僕の顔を見ながらそう述べる。
和服姿の彼女は今ものすごく不満そうな顔をしていた。いや、憤慨?
……まあそんな色々な感情がこれでもかと言うぐらい交じり合った表情を浮かべている。
「だからオレは反対だったんだ。アイツの言う事を真にうけるなんて」
そしてこの一言、これが今の僕たちの状況を物語っていた。
僕はおろか、鮮花や浅上さんもそれについては否定しようとしない。
鮮花は式と同じく橙子さんへの憤りを感じているようで、憮然としている。
一方の浅上さんは物珍しそうに辺りを見渡している。
「でも兄さんはわたし達の事を考えて行動してくださったんです。そう言うのはどうかと思いますけど?」
「そうですよ。先輩だって色々と苦労は重ねているのでしょうし……」
式の言葉に対し、鮮花が反論、それに浅上さんが同意する。
「そんな事は関係ない。今起こってる現実がそれを見せてるだろ?」
「大体あなただって乗り気だったじゃないですか。
『本人の許可をもらって嫌がらせができるんだ。それを利用しない手なんてないだろ?』
これあなたの一語一句そのままの台詞ですけど?」
「それとこれとは話が違うだろ。オレが言ったのは報酬の部分だ。それまでのはめるまでの話じゃない」
この先いつまで続くか分からない口論をしだす鮮花と式。
ここが事務所ならそれに橙子さんが入ってきて仕事の効率をほぼ0にすることこの上ないが、あいにくここはそうじゃないのがせめてもの救いだ。
僕はため息をついて浅上さんの方を見る。
こんな状況になっても凛々しい、と感じさせてくれるのは心強い。
「ごめんな浅上さん、僕の……」
「藤乃、でよろしくお願いします。先輩」
凛々しくもかわいらしい顔をこちらに向けて真顔でそう述べる。
少し考え込んだが、式も呼ばれ方にこだわっていたし、僕の方もこだわる理由がない。
「んー、じゃあお言葉に甘えて……。藤乃さん、僕の……」
「藤乃さんじゃあ私が先輩をこき使ってるみたいじゃないですか。ダメですそんなの。呼び捨て、もしくはちゃん付けで」
呼び捨てかちゃん付け……。いいのだろうかとも思うけど、些細な事だろう。
「分かった。なら藤乃ちゃん、僕のせいで君まで巻き込んでしまって……」
「いいんですよ先輩。私だって好きであそこにいるんですから」
にこっ、と漫画ならそこで確実にその擬音が入るに違いない笑顔で答えてくる。
こんな状況じゃなく、公園でお弁当を持ちながら昼を食べてる時にこんな会話をしてればいい雰囲気なんだけど……。
「おい幹也、こいつと話してても事態は変わりはしないぞ」
「兄さん、そんな和やかな会話でこれが改善されるなら式にだって土下座しますけど」
いつの間にか言い争いをやめた二人がジト目でこちらを睨んでくる。
……頼むからこんな事以外でも仲良くしてほしい。
「兄さんは今私たちがどのような状況に置かれてるか分かってるんですか?」
「でもタダで旅行にいけた事に変わりはないじゃないか。それで良しとしないか?」
「ただの旅行ならな」
「ただの旅行でしたらね」
うあ、式と鮮花のコンビ攻撃。ボーナスポイント付きますよ。
それに2人の目つきが更に冷たくなった気もする。
「だって明らかにおかしいでしょう! この世界は!」
鮮花はそう言って地面の砂を蹴り飛ばす。
砂場にあるような灰色のものではなく、黄金に光り輝くそれを。
青い空、白い雲、広くどこまでも続く大地。
太陽は大地をすみずみまで照らし、僕らに温かみを分け与えてくれる。
そうさっきは言ったが、それどころかものすごく暑い。
周りを見渡すと360度全てに地平線が確認できる。
多少の起伏があるものの、ほとんどがその黄金の砂で覆われている。
遠くには動物園でしか見たことのないラクダに乗っている民族衣装に身をかためた人が見える。
そう、僕らは今エジプトっぽい所にいた。
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