/6日目

「さあ、準備はいい?」
「ああ。もちろんだ」
「ええ、大丈夫です」
「もちろんだって。行こうぜ」
「無論」
「…」
「もちろんです」
柳洞寺の階段の下。時刻は夜になったばかりだ。
雨は振り続け、見えるはずの星は依然として見えない。

状況は最悪だろうけど、これ以上先延ばしにする事はできない。
そう、これ以上の犠牲者を出さないためにも。

「こっちは3。相手は多分4。それでも大丈夫よね?」
「くどいってキャスター。かなわなくてもどうにかしないといけないんだ」
僕はキャスターに対してそう言い放ち、階段の上を見上げる。

まさにその雰囲気は異界と化していた。
まるで冥界を思わせるような死の雰囲気がここまで流れてくる。
こんな所普通の人が来たら、その瘴気だけで殺されてしまうかもしれないほどの…。

「さあ行くぞ!」
僕達はそのまま柳洞寺の階段を勢いよく昇り始めた。
待ち受ける敵、マキリのサーヴァントたちとそのマスターを倒すために。




Fate/the midnight saga(仮)

第19話


   /

 話は数時間前にさかのぼる。

連日の雨は続いているなか、僕らはまた憐の部屋に集まっていた。
話す主題は当然の事だけど、柳洞寺についてだ。

「英ねえの話だと、確認できた奴らの数は4人らしい。誰も彼も彼女が見たこともない人物だ」
「それはサーヴァントは全員この世に生きるものじゃないんだから、当然じゃないの?」
レンの言葉にキャスターがそう冷たく述べる。
そんな彼女にレンは手を横にふった。

「そうか? 普通4人ものサーヴァントを一気に霊地攻略に使ったんだとしても、マスターはどうなるんだ?」
「あ」
「4人も使って霊地を奪ったんだ。マスターも当然移動してるはずだよな」
なるほど、つまりその4人のうちマスターがいたはずだと言いたいのか。
レンは髪をかきあげた。

「それにいくらマキリのじいさんが優秀な魔術師だからって、前キャスター、アサシン、それから前セイバーの3人を支えてるとは考えにくい。だから…」
「…遠坂と同じように、マキリにも二人目のマスターがいると?」
「ああ。俺も会った事ないけど、当代のマキリがいるはずなんだ」
もう第一次より60年も経っている。
じいさん、すなわちゾウケン・マキリの他にもマキリの魔術師がいてもおかしくない年月は経っている。
でも…。

「アインツベルンは何か探知してないのか?」
「いえ。どんな相手だろうと勝てるようにセイバーを召喚し、お嬢様は派遣されましたから…。第一遠坂の事も僕は知らなかったんですよ?」
「む、確かにそうだよなぁ…」
マキリの魔術師は知らない。
でも、僕とお嬢様は…。

「俺冬木に関しては知らないから、マキリがここに住んでるって事は知ってても場所が分からないんだよな…。今強襲してももぬけの空だろうけど、
 こんな事なら瑪瑙に聞いておけばよかったな」
「すんだ事よりこれからの事だよ。それであの英ってやつはどうしたの?」
キャスターは英さんと出会ってから彼女の事をよく思ってないらしい。
見ているとアーサーの姉でもあり、ニムエの姉弟子…て事にキャスターの世界ではなってる…のモルガンを思い出すかららしい。
でも彼女からはサーヴァントの気配は感じ取れなかったから少なくとも敵ではない。

「でも彼女も60歳以上でしょう? カズナリもそうだったけど、第一次と関係あるやつだったとしても不思議じゃないね」
とキャスターはまだ彼女を疑っている。

「…この屋敷にお世話になったらどうだって言ったんだけど、葵のところにお世話になるって言って断られた」
この話は僕も聞いていた。キャスターはすぐに工房に姿を隠したから知らないけれども。

昨日の夕飯で聞いた事は、葵もまた英さんを尊敬しているとの事だ。
同姓から見ても彼女は魅力ある人物だと。
剣技は英雄のアーチャーさんから見ても騎士を感じさせる真っ当で強いとの事。
この数十年間で数多の戦場を駆け抜けた結果だと言うけれど、衰えはまだないらしい。

「アオイにどうしてもってせがまれてね。別に会えなくなるわけじゃない」
と英さんはあまり気にしていないようだったけれども…。

「アオイのところに…! そう…」
キャスターはこう意味深にうなづいて黙ってしまう。
その理由が僕には分かってしまうのがつらい。
もし真実を知れば…。

「んじゃあサーヴァントはアサシン、前キャスター、それから前セイバーだけでいいのね。そのゾウケンってやつがどんな奴かは知らないけど、
 それならあたしたちだけでも何とかできるんじゃ…」
「だと思ったんで確かめに行ってもらってる」
「「え?」」
僕とキャスターの声がかぶった。
確かめに行ってもらってるって…そういえばアーチャーがいない。この場にいるのは僕ら3人だけだ。

「もしかしてアーチャーに境内の確認を?」
「ああ。昨日の様子だと前セイバーとアサシンはあくまで進入したものを排除するように命令されてるみたいだったんで、
 境外から見る分には大丈夫だと思ったんだ」
…確かにそれは必要かもしれない。

何しろおとといの様子をアーチャーから聞いた限りでは、バーサーカーが前キャスターと手を組んでる可能性だって考えられる。
それに僕らが戦っている間にライダーやランサーの乱入があってもらっても困る。
だから相手の数の確認は絶対にしておくべきだ。

「…レン、あんた随分とさえてない? いつもと違うよ」
「悪かったな。いつも感情的で」
む、と腕組みをしながら不満そうにレンはこういうけれど、実際彼は考える事はちゃんと考えていると思う。

ほどなくアーチャーがレンの後ろに姿を現した。
表情からも見てきたものはよろしくないようだ。

「…で、どうだった?」
「やっぱり門前には前セイバーがいて、境内に前キャスターがいた。建物の廊下に一人老人もいたな」
「…そいつがゾウケンで間違いないな」
レンはそう小声でつぶやく。
前キャスターが境内に本拠を置いて、その中にいる老人なんて考えられるのはその一人しかいない。

「それからバーサーカーが前キャスターのそばにいたぞ」
「やっぱりか…」「やっぱりね…」
レンは顔に手を当てて、キャスターは腕を組みながらそれぞれ深いため息をつく。
これで敵サーヴァントは4体で決まりか。

「バーサーカーまでいるのかよ…。こっちは2、相手は手負いって言っても4。戦力がねー…」
前セイバーはセイバーと互角に戦ったって言うし、それならアーチャーやキャスターが一人でも倒されるかもしれない。
だって言うのにアサシンもバーサーカーもいるんじゃあ前キャスターにとどきすらしない。

「ここはアーチャーが宝具使って寺ごと敵を一掃するって言うのは…」
「宝具の強さならこの中だと俺らより前セイバーの方が強いんじゃないか?」
「あ」
そう、前セイバーにはセイバーの宝具グラムと互角の強さを持つ宝具がある。
あれを超える宝具なんて指で数えられるぐらいしかないだろう。
いざ宝具のぶつかり合いになれば、前セイバーにかなうとは思えない。

…キャスターのあの黄金の矢ならどうにかなるかもしれないけど、セイバーの対魔力はとてつもなく高いと言うし…。
正直この方法は使えないだろう。

「何? もしかして万事休す?」
「このままでいくと間違いなくそうなるよなぁ。ニムエってドラゴン召喚とかできないの?」
「円卓の騎士召喚できるだけありがたく思いなさいって!」
ドルイドって言ってもそんな幻想種の召喚とか使役を行える人は数が限られているんじゃないかな。

「あたしがアーサーかランスロットさえ召喚できれば前セイバーを任せて突破できるんだけど…」
「…でもエクスカリバーの元って確か岩から取り出す剣なんだからグラムだろ。あれで代用すれば彼らの召喚も…」
「あのね、そんな事するぐらいならセイバーに協力頼んだ方がはるかにマシでしょう」
キャスターはレンをじとめで見つめる。
だろうね。前セイバーを倒すためにアーサー王を召喚するために前セイバーと互角以上の戦いをしたセイバーに協力を求めるなんて二度手間だ。

「なら一番現実的なのは『協力を求める』だろ」
「誰によ。ランサーに? セイバーに? ライダーに? どいつもこいつも一筋縄じゃあいきそうにないけど?」
ランサーは論外。双魔ともども協力なんてこっちからごめんだし、むしろあいつらなら単独でも寺に突撃するかもしれないし。
セイバーとお嬢様も事情を話せば協力してくれるかもしれないけど…あえて出向くほどあせってはいないはずだし、ランサーを倒す事を目下の課題に していると思う。
ライダーとレイリー…。セカンドオーナーの代理人として行動しているんだから、一番組みやすい相手ではある。

「ライダーとレイリーが一番現実的だと思いますけど?」
だから僕は素直にそう提案する事にした。
これなら宝具もちのレイリーも加えられて、3対4でも有利に進められるはずだ。
だがレンは気の進まない顔をした。

「でもその代価が「アーチャーを差し出せ」とか言いそうだし、むしろ不意打ちでこっちを倒してくるかもしれないぞ。
 戦いで弱ったこっちを倒す事なんて動作もないことだしな」
「…そういえばそうだったっけ…」
すっかり忘れてた。
レイリーは瑪瑙の依頼で動いているのだから、目下の目的は双魔とレンをリタイアさせる事だった。

「双魔と憐を早々に脱落させていただきたいのです」
メノウは遠坂の当主として僕に頭を下げた。
レイリーの参加する条件がメノウの願いを聞く事なら、それすら行いかねない。

「何? やっぱり万事休す?」
キャスターは呆れながらも事実だけを述べた。
このまま行けば返り討ちにあうどころか全員殺されかねない。
…それに助けなら実際はもう一人いるんだけど、彼は多分動いてくれないだろう。

シェラザード、英雄とも戦えるだろう死徒27祖の一人。
彼は僕がある程度ピンチになるかキャスターの消滅によって真祖をおびきよせる事に目的があるのだから、助けてはくれないはずだ。

このままほっとくのは明らかな論外だし…やっぱり打つ手なしなのか…?


「…その事なら大丈夫だと思うぞ」


「「「へ?」」」
アーチャーの発言にそれ以外の人の声がかぶった。

「大丈夫? それって助っ人の事? それともマキリのやつらが互いに争うから手出しする必要がないとか?」
「その答えならそろそろ来るんじゃないか?」
キャスターの言葉にアーチャーはそう言うだけにとどまった。
そろそろ来る? 一体誰が…。

と、扉を叩く音が聞こえてくる。なんかノックの仕方が上品な気が…。
僕ら4人で玄関に向かう事にする。


「おはようございます。憐お兄様方」


そして僕らを確認すると即座にそう口に出した。
まるで狙いすましたかってぐらい。

そう、そこにいたのはこの地のセカンドオーナー、遠坂メノウだった。

「め…瑪瑙?」
「どうかなさいました? そんな鳩が豆鉄砲を受けたような顔をしているようですけど」
「それはまた絶妙な比喩で」
「それほどでも」
いや、問題はそこじゃないと思う。
レンもそれに気づいて顔を横にふった。

「って違う! おまえ足が不自由なのにこんな雨の中ここに来るんだよ! 使いよこしてくれればこっちから出向いたのに!」
「こちらからあなた方に要求があってこその訪問です。お気になさらずに」
それに、と続けて彼女は手で後方にいた2人にうながす。
入ってきたのは瑪瑙に協力をしているレイリーとライダーのコンビ。
2人は無言でこちらに挨拶をするので、こちらも会釈をした。

なるほど。ライダーを召喚したのはこうやってメノウが移動しやすくする意味もあったのか?

「ライダーの報告で分かりました。どうやら前回のキャスターが本格的に活動をしているようですね」
「ああ。そうみたいだな」
2人の遠坂が真剣な顔で話している。

「前のキャスターは元は遠坂のサーヴァントだ」
これは一成さんが話してくれた事だけれども、遠坂が召喚したサーヴァントなのだからとても高貴なキャスターだったに違いない。
2人の顔は固い決意を見せている。
今の前キャスターがどうなっているかは僕には分からないけれど、それほど歪められてしまったのか。

だから、メノウの次の言葉も想像できてしまった。

「では今回の戦いでのみ『休戦』ではなく、『同盟』にしましょう」
「…いいのか?」
レンは念を押すようにこう言い放つ。
いくらメノウとレイリーが同盟関係にあっていても、そこまでメノウの好きに動いてくれるはずがない。
多分レンはそう考えての言葉だろう。

「かまいません。レイリーとしてもサーヴァント4人も集まったマキリを放ってはおけませんし、
 わたしもこれ以上遠坂のサーヴァントの末路をけがさせたくはありませんしね」
これでレイリーがこちらを不意打ちする事はなくなるって事か。
レイリーは当然の事ながら不本意といった顔をしているけれど、あきらめの気持ちの方が勝っているようだ。
意外だったのはライダーがおとなしい事だ。やっぱ彼としても4人のサーヴァントを早く叩きたいのだろうか。

「これでむこうは4、こちらは3です。憐お兄様はキャスターとだけででも戦うおつもりだったのでしょう?」
「…まあな。前セイバーたちをこのまま放っておけるか。これ以上の犠牲者を出してたまるか」
ぐ、と拳を握り締めて彼は力強く語った。
それを見てふっ、と笑うメノウ。

「…何かおかしいか?」
「いえ、お兄様は昔とお変わりになってらっしゃらなくて安心しました」
「それって成長してないって事だろ? なんだかなぁ…」
それにキャスターが最初に笑い、僕もつられて笑ってしまう。
ごめんなさい、レン。

「さあ。数はそろいましたから、後はわたしたち次第です。昨日はお兄様は活動なさらなかったようですが、どうかしましたか?」
「ん、単独で柳洞寺つっこんで返り討ちにあったってぐらい」
その失った魔力は完全には治っていないけれど、戦闘に支障はないらしい。
遠坂の土地である事をすれば一晩で治るような事を言っていたけど、教えてくれなかった。

ちなみにキャスターは全回復しているけれど、包丁の回収は行わなかった。
何でも前キャスターのせいで魔力の集まりが悪いとか。

「でもこっちは大丈夫だぞ。そっちは?」
「ええ。わたしたちも大丈夫です」
そうか、それは安心だ。
向こうは4でも手負いが3人。1日や2日で治る傷ではないらしいし、これなら…。

「ちょっと待て」
と、レンが手を突き出してメノウの前に出した。

「もしかして、瑪瑙も来る気か?」
「あら、来てはいけませんか? 幸いライダーの黒麒麟はわたしを乗せる余裕もあるようですから」
「…っ!」
危険だからついてくるな、と言いたかったんだろうけど、ライダーに守られてるって先に言われたんだから引き下がるしかないよね。
レンもあきらめたようで、ため息をついた。

「それでは遠坂憐。しばしの間よろしくお願いいたします」
「了解しました。遠坂の当主、遠坂瑪瑙殿」
互いに笑みを浮かべながら、そう言って契約は成立した。

 こうして僕らは新たに遠坂組を加え、柳洞寺に臨む事になった。


   /interlude

「…なるほど。遠坂が共闘する事になったか。意外だな。アーチャーがキャスターを連れてくることは考えていたし、
 セイバーを助っ人として連れて来る可能性は考えていたが…」
「それだけあなた方が危険だと言う事です」

山門で立ちはだかっていた黒づくめの前セイバーは来客に向けて述べ、瑪瑙がそれに淡々と答えた。
総勢7名。うちサーヴァント3名。正規のサーヴァントの半数がこの場にいる事になる。

「そこをおどきなさい、セイバー。いくらセイバーであるあなたでもサーヴァント3名を相手にかなうはずがありません」
瑪瑙が凛とした声で前セイバーに勧告する。
これは頼みではなく、単なる事実。あのシグルズだって3人のサーヴァントを一度に戦う事はおそらくできないと判断したからこその言葉だ。
その言葉を嘲笑うかのように前セイバーは笑みを浮かべた。

「位置で言えばワタシが上、あなた方が下だ。なら宝具を用いればあなた方を全滅させる事もできると思うが?」
「さあ? それはどうかしら」
キャスターは前セイバーの言葉をばっさりと斬る。

「確かに単独ではあんたの宝具が最強かもしれないけどね、何度も言うけどこっちは3人。ならあんたの宝具なんて紙くず同然さ」
そしてキャスターは確信している事をそのまま表情に出して言い切る。
と言うよりこの場のサーヴァント2人だけの攻撃で全ての宝具を上回る可能性があるのだから。

「そこをどかないなら力づくで突破させてもらうよ」
キッとキャスターは前セイバーを睨みつける。
それに動じる前セイバーではない。

「そうだな。ワタシとしてもいい加減1人ぐらいは減らしておきたい」
前セイバーは抜刀し、構えをとる。
いつもの脇構えではなく、肩に担ぐはっそうにも似た構えだ。
この変化は前セイバーが上にいる事にも関係しているだろう。

「覚悟!」

前セイバーはそのまま飛び出した。
その速さはまるで風の中でも疾風を思い出させるもの。
石段に触れずに下りていく。

一瞬の間に間合いに入る直前から剣を振るう。
狙うはキャスターのマスター、ディートリッヒの首。
彼女は前セイバーの速さに反応しきれておらず、そのまま落とせるだろう。
妨害さえなければ。

金属音が鳴り響く。

前セイバーの剣をおさえたのはアーチャーの双剣だった。
そのままもう一方をふるうアーチャー。前セイバーは間合いを離した。
元よりこの攻撃でディートを殺せるとは思っていないが、それでも内心で舌打ちした。

「これは…?」
事情を知らない瑪瑙とレイリーは若干驚く。
前セイバーの剣は西洋のもので、両手もちタイプ。それを敵は片手で振るっている。
当然そうするからには何かしらの防具、例えば盾のようなものを装備しているかと思ったら特に武装にかわりはなかった。

(何かセイバーにあったか…?)
レイリーは冷静に判断する。

その使っていない手は腰に手を当てるのでもなく、ほとんどだらんとしている状態。
確認していないが、よほどの強敵と戦い負傷したのだろう。
さしずめセイバーあたりか。

「…これ以上の時間稼ぎはさせない方がよさそうですね」
瑪瑙の判断は使ってないのではなく、使えないだった。
それならサーヴァント一人だけでも十分に前セイバーを足止めできる。
いつまでもセイバー1人相手にもたもたはしていられない。

「ライダー、すみませんが前セイバーの相手をお願いできますか?」
『え?』
一同が瑪瑙の言葉に若干の違いはあれど、驚く。
麒麟に乗ったまま瑪瑙は続ける。

「キャスターやアーチャーよりも貴方の方が前セイバーを相手にするのに適していると思われます。わたしがサポートいたしますから」
「む」
「んー…」
キャスターが召喚する円卓の騎士ではシグルズにはかなわない事実から判断し、アーチャーも双剣を使って隙を作り弓を使うと言う策をとる限り 前セイバーにはかなわないと判断したためだった。
2人のサーヴァントはそれをすぐに悟り、黙ってしまう。
結局誰かが前セイバーの相手をせねばいかないのだから。

「…分かった。そうしよう。だが…」
「え?」
ライダーはやすやすと瑪瑙を持ち上げ、憐に渡したのだった。
2人の遠坂はともに困惑の表情を見せた。

「おまえにはまだやるべき事があるんだろう? なら私一人で十分だ」
そう言うなりライダーは麒麟で空高く舞い上がり、鞭を構える。
憐は瑪瑙に対してうなづき、瑪瑙もまたうなづく。

「行こう。まだ敵は大勢いる」
一行は階段を駆け上がっていく。

「行かせるか」
前セイバーは剣で阻もうとするが、ライダーの鞭で防がれてしまった。
これ以上は無駄だと判断した前セイバーは追撃を行わず、一行を見逃す。
結果、一行は山門を通過していく。

「騎乗兵、再見」
レイリーはこういい残して奥の方へと進んでいった。
その場に残ったのは2人のサーヴァントだけ。

「もっと抵抗すると思ったんだがな…」
若干意外だと言葉に発する。
場所の違いは決定的な違いに時になるものだ。
もしバーサーカーやアサシンに加勢にこられたらどうなっていた事か。

「まさか。ワタシだってサーヴァント3人を同時に相手するほどの実力者じゃない」
前セイバーは笑みを浮かべてそう言い放った。

もしあのまま一行を相手すれば、たとえアサシンの援護をもらっていても負けるのは前セイバーの方だっただろう。
なぜなら、前セイバーが受けた剣と槍の傷はほとんど治っていないからだ。
前セイバーは知らないが、アーチャーの使った槍はゲイ・ボルグ。その呪いの効果は剣の効果も相成って前セイバーを蝕んでいる。
なのでできるだけ自然に相手を絞りたかったのが前セイバーの思っていた事だった。

一方のライダーは前セイバーが手負いなのに既に気づいている。
だから宝具にさえ気をつければ勝機は確実に自分にあると判断した。

互いに武器を構える。
お互い最低限の命令は時間稼ぎだが、それで終わらす気は全くなかった。
他のパターンとは違い退却はできないし、かと言ってマスターからの制止もない。
なら、どちらかがリタイアするまで勝負はつづこう。

「いくぞセイバー!」
「来いライダー!」
2人の英霊のバトルを持って、総力戦の火蓋が切って落とされた。

interlude out


   /

「…お寺ってもっと神々しいとばかり思っていましたが…」
「気にするな。俺だってそう思ってる」
前のセイバーを無事にやり過ごし、僕らは境内に入っていた。
その雰囲気はもはや神聖なものではななく、地獄のようなものだった。

なぜなら、ここには死の気配しかしてこない。
少しでも気を緩めるとはきそうになるほどの嗚咽が襲ってくるけれど、何とか我慢する。

「…アーチャー、敵はどっちに?」
「池の方だ。池の中に前のキャスターが魔術を構成してる」
水属性の魔術師だから池で魔術を構成しているわけか。

と、

「「!?」」
アーチャーとキャスターが途中で止まる。
その視線は寺の中のほうに向いていた。

「…」
「これって…?」
レイリーとレンも寺の方向を向くけど、レンはなぜか首をかしげた。

「どうしたのですか?」
メノウ(持ってきた車椅子に乗っている)は止まって振り返り、こう言う。
僕も同じで一体寺の中に何があるのかは分からない。

「…殺気がする。おそらくアサシンだろ」
「殺気…? それっておかしくないですか?」
僕とメノウはレンやレイリーのように戦いでは多分魔力を感じ取って行動すると思う。
だから、魔力がない達人相手にはあまり向いていない。

アサシンは暗殺者なのだから、膨大な魔力を持つ英霊と違い魔力はほとんどない。
あっても遮断するのが常識。
なのに気配をもらしているって事は…?

「アサシンなら気配遮断に特化しているのですからわざわざ気配を発するはずが…」
「…アサシンに対して戦力を分散させる事が狙いだろ」
メノウの言葉にレンはそう言いながら抜刀する。
やっぱりそう考えるだろうなー…。
だからと言って先にいるのはバーサーカーと前キャスター。サーヴァントを振り分ける事はできない。

「では私が行きましょう」
だから僕はそう断言した。

「ディート…!」
「レンだけあれだけ戦っておいて、私が後ろで安全でいるわけにはいきませんから。幸いアサシンに対魔力のスキルはないでしょうし」
「同意。吾も同行しよう」
レイリーもまた武器二つを取り出し、左右にもつ。
うん、この組み合わせなら前衛と後方支援がそろっているし、アサシンであってもレイリーなら対抗できるかもしれない。
…実際に彼女の実力を見た事はないけど。

「でもディート! ここは俺が…!」
「レンはこの先にいるゾウケンを倒さねばならないのでは?」
「う…っ!」
レンは僕の意見にたじろいだ。
ゾウケンがアサシンのマスターだったとしても、前キャスターのために本拠をここに移したのだからそちらの近くにいるはずだ。
当代のマキリの当主が前キャスターのマスターである可能性は多分ない。60年間キャスターをささえたのだから、ゾウケン以外いないだろう。

「前キャスターの件は遠坂で決着をつけてください。では」
再見ツァイツェン
僕とレイリーはそのまま寺の中へと走り出した。
振り返りはしない。必ず僕らは仲間の下に帰ってみせる。

「それではよろしくお願いいたします」
「こちらこそ」
やはりレイリーの方が移動速度は速いか…。
とにかく建物の中に入った僕達。照明も蝋燭の明かりもなく、本当に真っ暗だった。

Licht光よ
明かりを出して建物の中を照らす。
相変わらず人の生気を全く感じさせず、不気味な印象を与える。

「目印になるかもしれませんが、光は消します?」
「…否。暗殺者なら暗闇でも…」
暗闇でも暗殺を決行できるよう気配を感じ取れるのだから、明かりがあってもなくてもあまり変わらない、か。
レイリーにうながされるがまま建物を奥の方へと進んでいく。

「ここは…?」
そして出たのは大きな仏像がある部屋だった。
残念ながら寺には疎いのでどういった事が行なわれるのかは知らないけど、きっと祈りがささげられるのだろう。
でも今回の目的は仏ではない。

 その暗闇の中にそいつはいた。
黒一色の装束を身にし、白い仮面だけが宙をういているかのように顔にある。
明かりをもってしても白い仮面しか見えないぐらいだ。

「あいつが…」
「暗殺者の僕…」
間違いない。こいつが7人目のサーヴァント、アサシンだ。

と、予備動作を全くなしにアサシンはどこから取り出したのか分からないダガーを何本も放ってきた。
とっさに魔術をつむごうとする僕だったけど、

「ふっ!」
今はレイリーがいた事を思い出して中断した。
彼女がこちらに傷を与えるだろうダガーを全てはじく。


「…へえ、すごいですね。さすが普通の人が英霊に挑もうとしているだけはありますよ」


「「!?」」
どこからか聞こえてきた声に、アサシンの方に注意を向けながらも耳を傾けた。
声の主は…アサシンの後ろだ。
姿は柱に隠れて見えてこない。声は女性のものだ。しかもかなり若い。

「そうですか。他の英霊にあなた方の英霊を当てるんですか。それじゃああなた方を倒せばわたしたちの勝利ですね」
くすくす笑いながらこんな事を言い出す。

「…マキリの当主とお見受けいたしますが、違いますか?」
「…マキリ、ですか。わたしたちの魔術をなおマキリと呼ぶのでしたら、そうですと答えましょうか」
やはりそうか。アサシンはマキリのサーヴァントだったか。
そしてその当主、彼女は多分…。

「ついでに教えちゃいますけど、アサシンのマスターはこのわたしです。キャスターさんはおじいさまのサーヴァントですからあちらですよ」
「やはりそうでしたか」
ついでに前セイバーがどちらかも聞きたかったけど、さすがにそれは教えてくれないだろう。
なら敵は目の前の二人と言うことになるけど…マスターは何かが異質だ。

なぜなら、魔力を全く感じ取れない。
魔術師ならばどんなに隠すのに優れていてもサーヴァントと契約している以上絶対にもれるはずなのに、なぜ?

「まあ、ですがあなた達だけがこちらに来た事はわたしにとっても僥倖です」
雰囲気が、変わる。
殺気につつまれていくいつもの戦いではなく、逆に敵から殺気が失せていくのだ。
そして、姿はあるのに2人の気配もなくなっていく。

「わたしの目的のためにはあなたたちはとっても邪魔なんですよ」
姿も霧のようにかききえていく。

「ですから、死んでいただきます」
そして、全てが消えた。

「来るぞ」
「ええ」
こうして僕らの戦いが始まった。


   /interlude

「…何だこれは?」
「気持ち悪い…」
俺と瑪瑙はそれを見るなりこう思わずつぶやいてしまう。
だって、これは異質だ。

あんなに綺麗で澄み切った柳洞寺の池が、死という概念によって汚染されつくしていた。
あれに浸ったが最後、生の一滴までもが略奪されてしまいそうで。
吐き気がする。

「あれが…前のキャスター。先代の元サーヴァントですか」
「ああ。そうだな」
池の中央では水面の上を前キャスターが立っていた。
足元には巨大な術式。これを使って何かをしようとしているのだろう。
そして、池のほとりにはバーサーカーのクラスを与えられた少女がたたずんでいた。

「…ひどい。あれがご先祖様が召喚したサーヴァントと…?」
「…ひどいを通り越して、あそこまで反転させられてるとむしろすがすがしい気もするけどな」
もちろん俺の言葉は本気ではない。

サタナ、湖の貴婦人。
だからこそ同じ水属性のスキュラに似ている気がして、同じ湖の貴婦人の可能性を持っていたニムエに似た気がしたんだ。
水は生命の源。だというのに今のサタナが受け持つ水はその生命から命を奪ってしまう。正に反転だ。


「カカカ…。よくぞ来なさった。1人の魔術師として歓迎しよう」


そんな声がバーサーカーのそばから聞こえてくる。
その場にいる俺たち四人は既に戦いの準備はできているので、各々がそちらの方に構えた。

 そこにいたのは老人。
和服で背はかなり低く、頭はもうはげている。
だと言うのにこの雰囲気。これが年齢を積み重ねた生粋の魔術師か。

「マキリ…ゾウケンとお見受けいたしますが」
「いかにも。遠坂の当主殿。先代は元気にやっておるか?」
瑪瑙は返事をしない。
先代たちは10年も前に死んだことぐらいこいつはとうに知っているはずだ。
安い挑発はさすがにうけないか。

「ご先祖様のサーヴァントを死してもなお用いて何をしようとしているのかは知りませんが、この地を統括するセカンドオーナーとして命じます。
 直ちに前キャスターにこの行いをやめさせなさい」
「はて、この行いとは…?」
ぐ、この場においてシラをきるか。
と言っても実際は俺にも前キャスターが何をしたいのかがいまいちよく分からない。
とにかく百害あって一利なしなのは十分に分かるが…。

「あら、何ならあたしが説明してやってもいいけど」
そう言い出したのはこちらのキャスター、ニムエだった。
その表情は明らかに不愉快を表してるし。

「前回の聖杯戦争であんたはキャスター…って言うのはめんどくさいし、サタナでいいね。を手に入れた。そしてあんたはそのサタナを汚し始めた。
 聖杯戦争中にそれを終わらすつもりがあったかどうかは知らないけど、結局そのサタナはケイローンに殺されたのよね」
うん、サタナって真名は瑪瑙から、ケイローンって真名はディートを通じて一成さんから教えてもらったものだけど。
だが後半部分はおかしい気がする。

「キャスター。死んだんなら魂はなくなってるはずだし、それなら死体すらこの世にとどまる事なんかできないんじゃないのか?」
「だからかろうじて生きていた、それがレンの意見?」
「ああそうだ」
と言うかそれ以外考えられないだろ。
聖杯戦争を始めたゾウケンなら前キャスターと前セイバーを現界させ続ける手段を持っていたはずだし。

「違うね。あいつはそんな生易しい存在じゃない」
はき捨てるようにキャスターはそう言い放つ。
そしてどこまでも憤慨していた。

「あいつはね、人間の死そのものなのさ」

「人間の死そのもの?」
「ええ」
確かに目の前の前キャスターからは死以外の何も感じられない。
どんなに悪であっても、あの死徒ですら生を感じると言うのに。あの前キャスターは生命そのものと全く違う存在だ。

「アーチャーも感じてるだろう。あいつが他のサーヴァントと違うって事」
「ああ。あいつはサーヴァントであってサーヴァントじゃあない」
サーヴァントであってサーヴァントじゃない?

「なぞなぞか?」
「違うって。あたしが言いたいのはね、あいつはもはやこの星にいていい存在じゃないって事」
ごめん。全くもって意味が分からないって。
やっぱなぞなぞじゃないか。
キャスターは続ける。

「本来なら脱落すればその触媒になったもん以外は消えてなくなるはずだけど、その躯が残ったんだろ。それをあいつは利用した。
 てなふうに解釈するのが正しそうね」
「だからその魂がなくなったら世界に存在し続けられるはずないだろ!」
「そう、だからこそ、かしら」
だからこそ…だと?
魂がなくなったら存在できない。なのに今前キャスターはいる。

「…受肉したとでも?」
「おしい! その方法もあるけどあいつは霊体のままだ」
違う? …いや、この方法を考えたくないだけだ。
つまり…あいつは…。

「元々あったサタナぐらい強い魂を補い、維持をしている…ですか」
瑪瑙は悲しそうにそう述べた。

「かと言って60年ぐらい前の話だ。いくらなんでもその時代に英雄になれるぐらい強い魂を持ったやつをそう簡単に見つけられるとは思えない。
 だからね、多分あいつはこうしたんだ」
「…」


「前キャスターは数多の魂の集まりで維持されている」


「ぐ…!」
思わず拳を握り締め、歯を強くかむ。口から血の味がしても俺はやめない。

「元々サタナが持っていた宝具を逆転させて魂の略奪を行うようにし、次々と人の命を維持と強化に費やしてきた。
 今なんてもう立派に反英雄にもなれるぐらいに強くなってるから…犠牲になった人は万は下らないだろうね」
そんな大勢を犠牲にして今のこいつがあるわけか。
なんて事だ…。

「いや全く、その通りじゃ今代のキャスターよ。及第点どころかほぼ的を射ておる」
不愉快になる笑いをしながらゾウケンはそうキャスターをほめた。
この中で一番キャスターは落ち着いているかもしれない。
それだけかつての時代には外道な魔術師がいたのか…?

「それはどうも。ついでに聞きたいんだけどさ、何で協会にも教会にも知られずに採取ができたのさ」
それは俺も聞きたかった。
前セイバーにしろ前キャスターにしろ、魂を奪って現界していたなら絶対にばれるはずだ。
ましてやそれが数十年間も続いていたらいくら極東の地だからってばれないはずがない。

「ふむ。それは数多の戦場を駆け巡った事にあろう」
「あまたの戦場?」
「ついこの前の戊辰戦争やアヘン戦争など世界のあらゆる所を。幸いにもサーヴァントでありながらサーヴァントではないあやつの単独行動は
 お主たちの比ではなく、瀕死の者の採取しか行っておらんからのう。一見すれば普通の戦死に見えるわけじゃ」
…戦争という森に魂の略奪という木の葉を隠したか。
反吐が出る。

「ああそう、セイバーはそれを行わんかったな。あやつは全く魔力を使わず、運動も人間以下しかできないように己を制限した上で数多の戦場を
 駆け巡ったにも関わらずそれを行わんかった」
「「え?」」
俺とキャスターが同時に疑問符を投げかけた。
いくら魔力を戦闘で使わなくたって動けばその分魔力は消費する。それが人間並みの動きしかできないようにしていたって。
消えるリスクを背負って戦場を駆け巡った…?

 マスターを狙おうとせず、己のために魂の採取も行わない。だと言うのにゾウケンに召喚されたセイバー。
分からない。あいつは何が目的で、何を心に刻んでるのだろうか。

「騎士…か…」
あえてひっくるめるなら前セイバーは多分これだろう。
アーチャーとは全く別の、洗練された剣技。
聖杯戦争抜きで本当の名を知りたいものだ。

だが今はその前セイバーはライダーと交戦中。目の前にいるのはバーサーカーと前キャスターだ。
ならば当面はこいつらの事が最重要だ。

「本題。この死そのものと化した池、それに大魔術を展開しようとする術式。これはもう決まりだね」
キャスターは前キャスターを指差してこう断言した。

「この雨に乗じて冬木全体を襲う魔術を行おうとしている」

「な…」
「なんですって…!?」
俺と瑪瑙の表情は間違いなく驚愕で覆われた。

「今までみたいに局地的じゃなくて、大魔術で一気に魂の略奪を行う気だろ。違うかい?」
「それではまだ及第点じゃぞ、キャスター」
「なに…!?」
キャスターは前キャスターそっちのけで考え込んでしまう。
…まどろっこしい。

「キャスター、いい加減にしてくれよ。どうせあいつらと戦うには変わりない…」
「ちょっと! 静かにしてよ! あんたの姿を蛙に変えてやってもいいんだよ!」
んな物騒な。
と言ってもキャスターは謎が解けるまで絶対に動かない。なぜなから彼女は魔術師だから、謎は解決させたいんだろう。
なんて面倒くさい…。

敵サーヴァントが2人いる以上彼女が動いてくれないと何もできないんだがなぁ…。
なら俺が解いてとっとと戦いを始めるか。はあ。

まず前キャスターは魂の略奪で生存、強化を行ってきた。今ある魔術系は冬木全体からの魂の採取用。雨だからこそできる芸当。
強化…? 採取…?

「待てよ…?」
強化、略奪、生存、聖杯、冬木…。
ってまさか…もしかして…。

「新たな聖杯を作る気か…!」

「ほう、遠坂の子倅が一番か。いかにもその通りじゃ」

やっぱりか…!
そんな事させてたまるか…!

「ちょっと! それどういう事よ!」
先に解かれたのが悔しいのか、半分いらだちながらキャスターが怒鳴ってくる。
って瑪瑙もアーチャーもこちらに注目してるし。

「魂の採取、これで前キャスターを強化する部分まではキャスターが説明してくれた通り。でもその続きがあったんだ。ヒントは第一次」
そう、多分これこそが前キャスターが今まで現界させられている理由だと思う。
純粋に手駒を増やす意味もあるけど。

「そうか…聖杯の破壊ですねお兄様」
「ああ。アインツベルンの聖杯がまた破壊されないとは限らない。なら一番早いのは独自に創ってしまうことだろ」
第一次の失敗原因は聖杯の破壊にあった。つまり戦争のシステムそのものは成功していたのだから。

 いくら前キャスターが魂を採取していても、今はサーヴァントクラス。
でもこの冬木の人たちを皆殺しにすれば上回ってしまうだろう。
としたらその堕ちた宝具でサーヴァントの魂までもが前キャスターに取り込まれる事になる。
聖杯に行く事なく。

そして全部のサーヴァントを取り込めば、間違いなく聖杯として機能できるはずだ。
問題はそんな知識がマキリにあったかという事だが、それは前キャスターの存在と宝具で埋められる。

「前回は不甲斐ない結果に終わったのでな。保険とでも言っておこうかの。幸いにもこのキャスターはそれに優れておるのでな」
「ぐ…!」
そんな事のために万単位の命を奪い、寺の人たちを殺し、そして今また冬木の人たちを殺そうとしているのか…!

「そんな事は、させない!」
俺は刀を構えてゾウケンを見据えた。
もはや全てが分かった以上話すべき事は何一つない。

後は戦い、勝つのみだ。

「アーチャーとキャスターはそれぞれバーサーカーと前キャスターをよろしくお願いいたします。わたしたちは…」
「ゾウケンを倒す。頼んだぞアーチャー、キャスター」
「分かっているさ」
「分かってるわよ」

瑪瑙は宝石を手に持ち、魔術刻印を光らせる。
アーチャーは夫婦剣を投影し、構えをとる。
キャスターはその杖を構えて、前キャスターをにらみつける。

「ほう、やるか。ならば…」
「■■■■■ーー!!」
「……」
ゾウケンの周りにうごめくものが見えてくる。
バーサーカーは咆哮をあげると、神代の怪物へと変化を遂げる。
前キャスターはその深い漆黒の目でただこちらを見てきた。

「あんたの野望はこれで終わりだ!」

構えのままでうかがうなんて事はしない。
俺はそのまま飛び出した。

interlude out



to the next stage…


第20話に続く

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 前キャスターの存在とそれによって行われる事柄は自分の想像の範疇を超えていません。
つっこみどころは満載ですが、温かい目で見てくだされば幸いです。
ところでこのように自分の考えを書く事は好きなのですが、文章を見てみると会話が多い気がします。
他のSS作家の皆様は心理描写がとても上手で尊敬してしまいます。
自分もいつか会話に頼らず、あのように書けるようにしたいものです。

 さて、ようやく書けました中間戦。この戦いでついに脱落者が出るかと思います。誰が脱落するかはお楽しみください。
そしてこれを境にレンたちの戦い方も変化させようかと考えています。
マキリ戦も終わったが聖杯戦争は終わってはおらず、日常が崩壊していく様子を…。
それでは決戦の場の続きで。
  2006年11月16日


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