Fate/the midnight saga(仮)
第6話
/1日目
「もう戦っていたのか…!」
思わず僕は他人事のようにつぶやく。
普段の僕だったら絶対に近づかないだろう。
何しろ僕にはお嬢様を補助するという役割があって、聖杯戦争に参加する事が役割ではない。
もちろんそんな腕もない。
「だけと…」
今の僕は違う。
もうお嬢様の所には戻れない。あんな事をしてしまってなお「僕を殺してください」なんて恥知らずな事は言えない。
だからこそなのか…、僕は自然と闘いが行なわれている方向へと足を進めていた。
もっと近くで戦いを見るために。
ランサーの腕は超一流、英霊にふさわしいものだった。
鎧につつまれながらも、動きで筋肉が戦闘に特化するためにつくられたものだと分かるし、槍を操る姿も力強い。
その彼が放つ突きの一撃は、全てを貫く閃光そのものだった。
その彼が放つなぎ払いは、全てを一閃するような鎌そのものだった。
まるで彼の攻撃は、軍が進んでいくような印象を抱かせる。
「五番…七番…射出!」
日本服の男、多分ランサーのマスターだろう、は何か小物を取り出し、それを投げつける。
そして、それは魔力をおびた光の短剣となって敵に襲いかかった。
と言う事は男は宝石魔術を多用するのだろうか?
見た目は20代前半。髪は銀と言うより真っ白の長髪だ。顔は整っていて、日本人らしくない。
でもどこかで彼の顔は見た事があるような…。
「
一方、女性の武闘家は拳を握り締め、それを日本服の男が放った魔術に対して突き出し、次には拳を開いた。
そして発せられたのは風の防御壁。それは男の魔術の威力を見事に受け流す。
だとすると武闘家、彼女は魔術師か。なら彼女がキャスターのマスターだろう。
「
そして即座に放たれる攻撃用の魔術。
魔術は言うなら自己暗示みたいなもの。
簡易的なものとは言え、それを単語数個だけでこなしてしまうという事は、戦闘に特化した魔術師か…。
格闘術とあわせると、執行者なのか?
年は20代後半か半ば。金の短髪でクセは全くない。水色の瞳と相成って、聡明な印象を抱かせるけど格好はまるで中世終盤の衛兵だ。
「うおおっ!」
大声をあげながら西洋剣を槍兵に対して撃ちつけるのは先ほど吹っ飛んできた戦士だ。
彼のほかにも似たような戦士が2人いる。
彼らの装備は長槍と西洋剣、そして背中には盾だ。
「…どちらかと言うと戦闘よりは戦争向きの装備だよね…」
たしかに彼らは強い。だけど彼らの戦いは一対一の戦闘より大多数対大多数の戦争に特化した感じだ。
そして、強いけれども対峙している槍兵ほどではない。
それでも武闘家と合わせると槍兵と互角以上に戦っている。
「光の壁!」
そして、キャスターと思われる魔術師、よく見たら彼女は僕よりも年齢が低く見える。でもその威厳は10代前半のものではない。
ローブを着ている上に三角帽子までかぶっているから外見がよく分からない。それでもとてつもなくきゃしゃに見える。
「ほら! 左の方ががら空きだよ!」
と戦士に対して指示なのか野次なのかを飛ばす。
彼女の魔術は僕から見ると異質なものだ。詠唱を全くせず、動作でそれの代わりをしている。
とすると西洋のそれじゃあないのか、それとも…。
にしても、聖杯戦争はもっとすさまじい戦いになるかと思っていた。
現にお嬢様の召喚したセイバー、シグルスは正に英霊と言った感じに尊かった。
でも彼らの戦いは、どちらかと言うと様子見に見えてしまうんだけど…。
「…ねえあんたら」
と、キャスターはいきなりランサーたちの方につぶやく。
もちろんその間も戦闘は続行している。
「何だ?」
ランサーが答える代わりにそのマスターの方が答える。
その表情にはまだ余裕がありそうだ。
「あたし達をなめてるの? それともそれが限界?」
「「…!」」
その言葉を挑発と受け止めたのか、マスターとランサーの顔がこわばる。
が、すぐにまた元の余裕に満ちた表情になった。
「キャスター、なめているにしろ、限界にしろ、私たちが彼らを殲滅する事に変わりはないのですから、私語は謹んでほしい」
「はいはい」
顔もむけずに武闘家がキャスターに鋭く述べるのをキャスターは呆れながら返事をした。
「でもシャルロット、そんなに怒ってるとすぐにふけちゃうんじゃない?」
「大きなお世話です!」
…仲がいいのか悪いのか…。
と、ここでランサーとマスターは武闘家たちと数メートル距離をおいた。
戦士たちはそれをあえて距離を詰めようとせず、その場で待機する。
そして流れる事数分…。
「なるほど…。今回のキャスターはとてつもなく有能なようだな。対魔力があるサーヴァントに対しては宝具で創りあげた戦士で対抗…。
しかもその戦士たちはサーヴァントになっていてもおかしくないほどの有能さ。強気に出るわけだ」
「それはどうも」
日本服の男にキャスターは無関心そうにつぶやく。
「今日は様子見ですまそうと思ってたんだがな…やはりオレが莫迦だったようだな」
と、ランサーに視線を移して…。
「宝具を使用を。全力で彼女たちを倒そう」
やはり彼らは様子見だったのか。
それに今までランサーが使っていたのは宝具と言うより普通の概念武装っぽかったし。
そんな日本服の男をランサーは哂った。
「元よりそのつもりだ。双魔が
「いや、ランサーが全力で戦うとオレの出番がないのでね…」
「はは、違いないな」
ランサーはそう言いながら槍をどこかにしまう。
どこかに、そう言ったのはまさしく槍が虚空に消失したからだ。まるで手品のように。
槍をしまうランサー?
「だが、我は双魔とは違って…」
そして、虚空から今度は別の槍を取り出す。
それは、まさしく宝具にふさわしい一品だった。先ほど持っていた槍とは定義そのものが違う。
でもその槍は穂が5本に分かれている。こんなのじゃあ突き刺す事はできても貫く事には向いてなさそうだけど。
「様子見などない。戦いにはいつも全力で向かうからな」
そして、前傾姿勢で構えをとる。
獲物を狙う獣のように。
「…やっぱり加減されてたのか。ダーヴェル、こっちも本気出してやりなよ」
「無茶言わないでくれ!俺達はあれでも全力で戦ってたんだからな!第一俺は殿と違って宝も所持してないし…!」
「泣き言は聞きたくないわよ!」
戦士の1人、ダーヴェルと言われた男はキャスターに対して愚痴を言うけれど、ばっさりと切られてしまう。
…あれは絶対に尻にしかれてるよな…。
「まあ、あんたらじゃあ心細いし、こっちもそろえましょうか」
そう言いながらキャスターはどこから取り出したのか、彼女の身長よりも高いかもしれない大釜を出現させる。
あれは宝具なのか…?
「さあランサー、準備はいいかい?」
「来い!」
キャスターは余裕たっぷりにつぶやくが、ランサーにはもう余裕が消えうせていた。
戦闘に対して全神経を集中させている。
「
その瞬間、最初は幻かとも思ったが、徐々にその姿を現していく存在があった。
いや、あったなどと言うものではない。それは次々と出現していく。
その数、百人以上。
「さてランサー、この精鋭の戦士たち相手に勝てるかしら?」
「勝とう、我の忠誠にかけてな」
出現したのは一個中隊の規模の軍だった。
それぞれが武器と防具を装備し、それはダーヴェルと呼ばれた戦士と同じ感じだけど、ダーヴェル達三人の方が若干豪華だ。
とすると、ダーヴェルら3人は彼らの指揮官だったのか?
「盾の壁を作れ!」
予想通りと言っては何だけど、ダーヴェルは出現した戦士たちに命令を飛ばしている。
すぐに武闘家とキャスターを守るように3重の盾の壁ができる。
これでは魔術や宝具を使わない限り突破できそうにないし、それもキャスターや武闘家の魔術に阻まれるだろう。
ランサー達はどう出るつもりだ?
盾の壁を作り終えてもキャスターの軍は動こうとしない。
ランサーはそれをただ黙って見据えていて、マスターは感嘆の声を漏らしていた。
そして、ランサーは一呼吸つくと…、
「行くぞ!」
地面を蹴ってその軍に立ち向かっていった。
/
それは、一言で表現するなら、素晴らしいの一言だった。
ランサーは敵に突撃し、盾の壁を突破するべく槍を振るう。
が、それは普通の槍兵では考えられないような俊敏さ、力強さをもって行なわれる。
常人より少し優れただけの戦士たちは壁を守れないでひるむばかりだ。
だが、その隙を突いて次々と戦士がランサーに立ち向かっていく。
実力差は明らかなのに、それを全く感じさせない志の強さが戦士には感じられた。
それにランサーは徐々にだが追いつめられていく印象を抱かせる。
「ぐ…!」
「ランサー!」
次の瞬間、ランサーの腹部をダーヴェルの剣が襲った。
鎧ごしとは言え、その衝撃は響いたようで、表情がゆがむ。
ランサーは軍がマスターに手出しをできないような位置を維持し続けている。
僕の見る限りマスターは一流の魔術師だろう。私から見てもそれは言える。
だが正直、魔術師として優秀でも戦闘者としては経験が足りないと言った所か。
シャルロットと呼ばれたキャスターのマスターは実戦に優れていて、無駄がない。
魔術も戦闘に特化したもので、主に使うのは風属性か。
「この軍の指揮官は貴公か、ダーヴェル」
「? そうだ。俺がこの軍の指揮官だ」
唐突にランサーが言い出すので、ダーヴェルは戸惑いながらも答えを述べる。
もちろん戦闘は続行中。
「良き軍だ。貴公…、そして貴公の上に立っていたものによほどの忠誠を誓っているのだな」
「なぜ俺が王でないと?」
「王がキャスターの僕として現れるはずがないと思ってな」
笑みを浮かべるランサーに、魔よけなのか、つばを吐くダーヴェル。
「その通りだ。俺は王ではないな」
彼の剣とランサーの槍が激しくぶつかる。その金属音は遠くにいる僕にさえうるさいと思ったほどだ。
その隙を突いて指揮官の1人が脇を攻撃に入る。鎧は破壊はしなかったが、やはりランサーは少し表情をゆがめた。
「そして彼らは貴公の協力者…と言ったところか」
彼ら、多分最初に召喚されていたもう2人の事だろう。
彼らの表情は少しゆがんでいる。押しているのに一体なぜ…?
「はああっ!」
と、とうとうシャルロットがランサーのマスターまでたどり着き、持っているレイピアで攻撃をしかけた。
それを持っていたナイフでかろうじてガードするランサーのマスター。その表情は苦虫を噛み潰したようだ。
「私の名はシャルロット・ド・ブランドー! あなたには早々に脱落してもらいます!」
「時計塔の魔術師か…! オレの名は遠坂双魔、貴様を脱落せし者として記憶に刻むがいい!」
そう言ってランサーのマスター、双魔はもう片方の手に持っていた宝石をシャルロットの方に投げつける。
それは何の威力もないものだったが、目くらましにはなった。
「六番、二番、九番、一斉射撃!」
「
至近距離から互いが放った魔術は互角だったようで、空中でぶつかって四散する。
シャルロットの方は舌打ちをするけど、双魔の方は距離が離せた分だけで満足なようだ。
一方、ランサーの方は多勢に無勢で、追いつめられていた。
「“
が、次の瞬間ランサーはそう述べた。
槍から射出されるのは五つの閃光。
そして、それは五人もの戦士を一瞬で葬った。
「な…っ!」
それに驚くのはダーヴェルだけでなく、他の戦士たちのほとんどだ。
「“
そして、間髪おかずに放たれる光の槍。
また同時に五人がその身を地に落とした。
「ほ…宝具の連発だって…!?」
僕は思わず口元を押さえた。
今の攻撃は宝具の使用によるものだろう。
ブリューナグ、ケルト神話で太陽神ルーが所有する、フラガラックと並んで有名なものだ。
だとしたらランサーはルー?
「いや、それはありえないだろうな…」
いくら聖杯戦争と言ったって、神を召喚できるほどのものではない。
せいぜいできて半神が精一杯だろう。
ルーを召喚できるはずがない。
だとしたらランサーは一体誰なんだ?
「“
再び五人が戦線から離脱する。
「ダーヴェル! ランサーに宝具を使わせないで!」
「分かってる!」
キャスターの叱咤にダーヴェルは剣で答える。
連発可能な宝具とは言え、タメは確実にある。なら大軍で押せば使う暇はないと言うわけか。
「木々よ…答えて!」
キャスターは杖を地面につきたてる。
と、
「何……?」
次には地面から木の根っこのようなものが生えだし、ランサーを拘束していく。
「この魔術は…!」
双魔が思わず驚愕の声をあげる。そんな僕ももう少しで上げるところだった。
世界の法則を曲げるのではなく、世界の法則に協力を求める魔術なんて…!
「全軍! 今のうちにランサーの首を取れ!」
ダーヴェルの掛け声で、軍の全員が咆哮し、ランサーに襲いかかった。
いくらサーヴァントと言っても、鍛え上げられた軍の精鋭たちが相手だ。その全てを刺していくのは容易ではないはずだ。
「ぐ…!」
槍でなぎ払いながらも槍の間合いを保とうとするけれど、その腕も根っこに拘束されていく。
そして、絶体絶命のランサーに戦士の刃が…、
「“
とどかず、そのほとんどが放たれた光の弾丸によって倒れた。
うめき声をあげてのた打ち回る戦士もいるし、即死の戦士もいる。
ただ、戦闘可能なものはキャスターやシャルロットを含めても10人に満たないと言う事だ。
「……とっさにそらしたか、キャスター」
「そんなバカな! ブリューナグだけならともかく、タスラムまで所持しているなんて!本当に太陽神ルーだとでも言うの…!?」
シャルロットは悲鳴にも近い意見を述べ、キャスターは渋い表情をしている。
そんな彼女に対し、ランサーは表情を変えない。
「違う。我は神ではない、とだけ言っておこう」
「く…っ!」
10人にも満たないのであれば盾の壁を作る意味は全くない。
皆がそれぞれ剣を、レイピアを、杖を構える。
先ほどよりも顔に明るさがない。相手は何しろ神ではないけど神の宝具を使うのだから、それも当然といえば当然かもしれない。
「我は槍兵、できれば飛び道具は使いたくはなかったがな」
「…っ!そこまで余裕を言ってられるなんて…!」
ランサーはその言葉に返事をせず、槍、ブリューナグをしまう。
「どうしたのです、ランサー。自らの獲物をしまうだなんて」
「ブリューナグ……使えんな。我ではこれの真価は発揮できまい。これではいつまで経っても決着はつかない」
ランサーの視線は呆れるようにしゃべるシャルロットではなく、キャスターの方に向いていた。
「そうだろう?」
そう、キャスターの表情にはまだ余裕があった。双魔と同じように。
「そうね」
そして…、
「
再び軍を出現させる。
その数は先ほどより更に大きい。
もはや一個中隊などではない。立派な国が率いる大軍だ。
「うそ…!」
一体キャスターは何者なんだ? あんな大軍を具現化させておいて、なお平然としているだなんて。
「…とてつもない優秀な魔術師なようだな」
「魔術師って言い方は正直止めて欲しいんだけど、まあそうかもね」
謙遜はなしですか。
「まあ、この規模のを召喚してしまったらもう再展開はできないだろうけど」
「ふ、正直だな」
「まあね」
キャスターとランサーは互いに微笑する。
「さて、いくらタスラムと言ったって、これだけの大軍を相手にはできないでしょ? あれはバロールたちを倒すためのものだし、君は槍兵。
飛び道具を使う器じゃあないはずだけど?」
「確かに。我はキャスター以外なら呼ばれる可能性を持っているが、元より接近戦を多用していたのでね。飛び道具は得意でない」
「正直で結構。じゃあ…」
大軍は既に盾の壁を作り、攻撃に備えている。
これだけの大軍でもやはり命令を出しているのはダーヴェル達だ。よほど身分が高かったようだが…。
「これは勝負あったな」
いくら再構成が不可能だからって、ランサーの負けは目に見えている。
あれだけの大軍を相手していればいずれかは双魔との距離が離れる。
となれば双魔を殺され、ランサーはお終いだ。
いくら彼がルーであろうとも。
「だからこそブリューナクでは不相応なのでね。こちらを使わせてもらう」
そうして取り出したのは、先ほどとは違って穂が分かれていない、純粋な意味での槍だった。
だが、それは先ほどよりもはるかにまがまがしいものだった。
「あれは…?」
神が所有するブリューナクよりもまがまがしいだなんて、一体あれは何だ…?
「食らうか。この一撃を」
「じょーとー」
キャスターはにんまり笑ってダーヴェルの方を見る。
ダーヴェルは何も聞かないうちにこくりとうなづいた。
「全軍、進撃!」
盾の壁はランサーではなく、双魔の方へと突撃した。
それにランサーも答えるように突撃をする。
一見するとその戦いは規模が大きくなっただけで、形態そのものに変化はない。
ただランサーの振るう武器がブリューナクから別のものになっただけだ。
「トオサカソウマ! これで終了です!」
戦士たちのわずか後ろでシャルロットがそう宣言するのも無理はない。
ランサーの敗北はこの状態では必死だ。
「…これで終わらすのは惜しいが…」
と、ランサーは戦士たちと若干距離をおいて、槍以上のまがまがしい殺気を放ってくる。
構えはさっきよりも前かがみ。これは身体の反発を最大限に利用しようとしているようだ。
そして…、
「“
その瞬間、キャスターの表情が青ざめた。
僕もその瞬間にあれのとんでもなさに気づく。
「ダーヴェル! あれを撃たせないで!」
今さら言ってももう遅い。ランサーは確実にあれを放ってしまうだろう。
あれは、死をもたらすものだ。
「――
そして、それは放たれた。
下から上へと突き刺そうとするそれを見たダーヴェルはそれを叩き落そうと剣を振り下ろす。
が、
「何っ!?」
それはダーヴェルの剣はおろか、戦士たちの体をうまく通りすぎていく。
物理的には絶対にありえない動きだ。
そして…、
「が…」
シャルロットの心臓を確実に貫いていた。
体を痙攣させる彼女を囲むように戦士は展開する。
「クー・フーリンが使ったような使い方もできると思っていたが、うまくいったようだな」
まるで他人事のように再び槍を構えなおすランサー。その構えには油断などない。
シャルロットは血を吐き出しながらその場に倒れた。
/
「……」
ランサーがゲイボルクを使うなんて意外だったけど、これでランサーの勝ちは決まりだ。
キャスターに単独行動スキルがあっても、もはや戦えはしないだろう。
キャスターやダーヴェルがランサー達を睨みつけるが、これ以上戦おうとはしない。
「さて、これで我らの勝ちは決まりだな。そうだなキャスター」
「ぐ…!」
キャスターはシャルロットを抱えながら呪詛をランサーにふりまく。
それを意にせず、双魔の方に視線を移した。
「さて、どうする?」
「どうするとは? まさかキャスターを生かす選択肢があるとでも?」
「いや、ならいい」
表情を変えない双魔にうなづき、ランサーは槍を構える。
と、
「…!」
双魔がこちらの方に視線を移してくる。
彼らとは百メートル以上距離をおいているはずだけど、これぐらいではすぐに見つかってしまうか。
「ランサー、キャスターをしておけ。オレは目撃者を始末する」
「……記憶を奪いだけでは不相応か?」
「普通の者ならな。だが…」
そして、双魔はこちらの方に走り出す。
ほんの数秒もかからず、彼は僕の目の前に現れた。
「貴様、名はなんという?」
「ディートリッヒ・フォン・アインツベルン」
即答。この答えに僕は迷いもしなかった。
「アインツベルンの手のものか。なら敵情視察と言ったところか」
「かもね」
そう…、
「ではここで命を落としても文句はあるまい」
確実にこの行動を取らせるために。
多分今の僕ではこれが最後のチャンスだろう。
この日が過ぎてしまったら…僕は僕でなくなり、私になってしまう。
ヤメロ
うるさい…
ヤメロ
だからうるさいな…
この者の血を奪い、渇きを癒せ
確かに今僕は今までにないぐらい渇いているに違いない。
だからってこの瞬間に我慢できないものでもない。
ドクン
心臓が跳ね上がる。
さっきは戦いに夢中になっていたから気づかなかったけど、もう限界ギリギリと言った所なのかもしれないな…。
「そうだね…」
なるべく不快感をあらわにしないようにして笑顔を見せる。
それには双魔も意外だったようだ。目を大きく開いている。
「抵抗はしないのか?」
「…」
その問いには答えない事にした。
双魔はふところから宝石をいくつか取り出してくる。
「それでは」
「命ずる…。全力をもってあの少女を救え…」
だが、双魔の魔術は発動される事はなかった。
突如出現した戦士によってそれは阻まれたのだ。
「ソウマ!」
「何をしている! お前ははやくキャスターを倒せ!」
双魔に立ちはだかる戦士を倒そうとランサーは動こうとするが、彼の言葉に対してうなづき、再びキャスターの方を見る。
見ると、シャルロットが胸の辺りを押さえてキャスターに寄りかかってはいたけど、まだ生きていた。
彼女を守ろうとする戦士は、僕を守ろうとする戦士の数より少ない。
それは、シャルロットがキャスターに令呪を使ってしまったからだろう。
双魔に対峙しているのは先ほどの指揮官の1人だ。わりと端正な顔立ちをしているけど、立派な戦士のそれだ。
「マスターの意志を無駄にはできない! 早くどこかに逃げるんだ!」
その戦士は僕にそうどなる。
その目は真剣そのものだ。マスターへの忠誠を誓っている戦士そのもの。言葉に一切ににごりはないだろう。
「う……あ……」
「早く!」
戸惑う僕。こうしている間にもランサーは戦士を倒し、シャルロットの方に向かっている。
武器はゲイボルグのままか…。
僕は一体どうすればいいんだ?
このまま逃げても結局僕はロアになってしまい、それでおしまい。
だからって逃げずにそのまま殺されてしまったら…シャルロットの行為が無駄になってしまう。
他人の思いを無下にはしたくない。絶対に。
でも…
「僕が生きてそのあとどうするんだよ…」
僕はその場にひざをつき、手をつく。
結局、僕が死んだ方が今後のためには変わりなんてない。
だから僕は…。
「あきらめるな!」
「え…?」
「最後まであがけ!自分1人で全てを背負うな!」
そう言ったのは、目の前にいる指揮官の戦士だった。
そして、僕のむなぐらを掴むと体を持ち上げる。
「…でも…」
「…昔、私の時代の時に国の平和を願った人物がいた」
「え?」
視線をそらす僕を無視して、戦士は急に話を始める。
だが、その言葉を無視する事はできなかった。
「そのためにその人は己の全てをかけて、剣をふるい、大地を駈け、血を流した」
「…」
「だが、結局国は滅んでしまった。それを取り戻す事はできまい。あのキャスターが望もうとも」
その戦士の表情はどこかさみしげだ。
哀愁さえただよっている。
「今私が思うのは、敵への憎しみでも自分たちの無力さでもない。私は…」
「私は…?」
「あの人にもう少し私たちに頼って欲しかった」
「…!」
「君がどのような苦難をかかえているかは分からないが、せっかく私たちを犠牲にしたんだ。もう少し生き延びて欲しい」
そうして、戦士は僕から手を離して再び戦いを始める。
「……」
僕は今にでもロアになってしまい、彼らを襲うかもしれない。
だから、僕は、すぐにでも命を捨てるべきなんだ。
お嬢様、ヨハンやジェイナ、町の人達、そして…
「レン…」
彼らに悲しい思いをさせたくはないんだ。
じゃあこの人達はどうなるんだ?
シャルロットは僕のために令呪まで使ってくれた。戦士は僕のために過去の話までしてくれた。
そんな彼らに、僕は…僕は…。
「…悪いけど、提案には乗れない」
やるべき事は1つだけしかないんだ。
僕はゆっくり立ち上がった。
「な…んだと?」
「提案には乗れない。と言った」
戦士は戦いながらもこちらを睨みつけている。
そんな顔をしても、僕の意志は変わりない。
「バカな! なら力ずくでも連れて行くぞ!」
「だから僕はこうする」
戦士が僕の体に触れた瞬間、僕は準備していた魔術を発動させる。
景色は一瞬で、ランサーが目の前にいる状態に変化した。
「何っ!?」
「空間転移か!」
戦士とランサーが同時にそれぞれの意見を述べる。
もうランサーとキャスターの間には数人しか戦士がいない。あれだけいた戦士はほとんどがランサーの手にかかったようだ。
ランサーは僕らの出現に驚いたようで、槍を構えなおす。
僕は本来優れた魔術師ではない。
でも、この一瞬だけでいい。
ロア!この僕にあなたの知識と技術を使わせろ!
「“
「
死徒と化した僕の魔術回路をフル回転させて魔術を発動させる。
それは光速と全く同じ速度をもってして、宝具の発動を行なおうとしていたランサーに襲いかかった。
「があああっ!」
さすが大魔術、いくらランサーでも無傷ではすんでいない。
僕の方は詠唱の短縮をしすぎたせいか、体が悲鳴をあげている。
だがあと一回はどうにかしないと…!
「捕まって!」
僕はそうは言ったけど、自分からキャスターとシャルロットの手を持ち、詠唱を開始する。
そして、ランサーがこちらを睨んでくる直後にその場から姿を消した。
/
「くは…っ!」
僕はその場に倒れてしまった。
自分には不相応な魔術の使い方をしたんだ。体が満足なだけまだマシな方だし。
僕達がいるのは町からそう遠くない位置にある原っぱだ。木は数本しか立っていないけれど、せいぜい空き地程度の大きさしかない。
生い茂る雑草はちょうど僕のひざの付け根あたりまで伸びているから、ちょっと風が吹けばまるで踊るようにたわむ。
その風は今は全くないし、虫の音もしない。静寂そのものだ。
いるのは僕、キャスター、シャルロット、シャルロットを守っていたダーヴェルと、僕が連れてきた戦士の5人だ。
ダーヴェルは既にぼろぼろで、出血がひどい。
それでも、シャルロットよりはマシだった。
彼女を見るキャスターの表情は沈んでいた。
「ダメだ……心臓が外れて即死は免れたと言っても、肺に大きく穴が開いてるよ……。君、回復魔術は使えるの?」
「……無理です」
確かに僕は回復魔術は使える。それはお嬢様に万一の事があったらと訓練した結果だ。
でも、あれは呪いの槍だ。あの呪いを解くほどの技術を僕は持っていない。
それを聞くと、キャスターは無念そうにシャルロットの方を見つめる。
「ごめん、シャルロット。あたしじゃあ役不足だったわ」
「そんなこ…とない…です」
シャルロットは口から血を吐きながら何とか言葉を発する。
肺に穴が開いているのに無茶な…。
「貴女とすごした時…間は有意…義でした。…これに参…加したの…は無駄で…はなかった」
「しゃべらないで! 本当に死んでしまう!」
キャスターは何とかシャルロットを治療するけど、すぐに傷が元に戻ってしまう。
「ゲイボルグの呪いか…! 今から解呪の術をほどこしても間に合わない…!」
「かまいませ…ん。それ…より」
シャルロットはそう言いながら手の甲をキャスターの方に向けて…?
「私が死んだ…らその子のサーヴァ…ントになりなさい」
ぼ…僕のサーヴァントに……!?
「どういう事ですかシャルロットさん!」
僕はそう言うけれど、シャルロットはただにっこり笑うだけだった。
「あなた…は何らかの理由…で死徒に…なってしまった。違いま…すか?」
「!」
「この…人ならどうに…かしてくれ…るでしょう」
なんで…なんで…
「なんで貴女はそこまで自己を他人に捧げられるんだ!なんで…」
僕はいつの間にか涙を流していた。
それはほおを伝って、シャルロットの顔に落ちる。
「貴女もそ…れと似たよ…うな事をしている…ではありません…か」
「僕は…」
僕は、ただ親しい、そして大切な人の事しか考えていない。とても他人なんか気にしてられなかった。
シャルロットは大きく咳き込んで体をゆらす。
「……願いたい事…があったんです…。できれ…ば私がなりたかっ…たのですが、無理でした…」
「シャルロットさん!」
シャルロットは最後の言葉をしゃべろうとするが、それが声にならない。
僕はただ彼女の名を連呼し、泣くだけだった。
「十全てを救えるヒーローがいればいいのに…」
その言葉を最後に、シャルロットは息をひきとった。
彼女の表情はあくまで笑みを浮かべたままだった。
「それで…。あたしのマスターになってくれる?」
「…。」
僕は何も言えなかった。
今起こったことは現実。それを認めないわけにはいかない。それは分かっている。
それでも…。
シャルロットは死に、その遺言とも言える内容にキャスターは忠実に従おうとしているんだ。
ダーヴェルともう1人の戦士は少し遠くで待機している。他のサーヴァントに備えるためか。
こみ上げてくる嘔吐を口を押さえてこらえる。これを我慢する事なんて、できやしない。
何回見直した所で、目の前に広がる光景は真実なのだから。
「で…、はいかいいえか」
血…
「あ…」
喉が渇く。それはまるで1ヶ月は水を口にしていないかのように。
ずきりと目の間が痛くなる。目に入ってくるのは大量の血だ。
「血…」
そう、人間の血血血血血血………。
「か…は…」
「ふぅん…」
キャスターが何かを納得する表情を浮かべるけれども、正直、もう僕にはどうしようもない事は分かっていた。
覚醒寸前の時にシグルズの宝具を受け、自分には不相応な魔術を酷使して、この出来事…。
正直、僕にはもう耐えられない。
「えい。」
ぽこっ
はっきり言ってしまえばそんな滑稽な擬音すら聞こえてきたかもしれない。
とにかく僕は彼女の杖で頭を叩かれた。
その途端に今まで頭、体、心に渦巻いていたもの全てが綺麗さっぱりと無くなってしまった。
「…え?」
「んー、急ごしらえだったけど、とりあえず成功かな?やっぱあたしって天才かも」
胸をはって「どうだい?」と言いたそうな満足げな笑顔を見せる少女。
でも僕は、今自分に起こった事が全然信じられなかった。
なぜなら自分はこれでも魔術師のはしくれ。自分に起こっている事はどうしようもない事ぐらい分かってる。
だからこそ僕は今まで共に働いていたヨハンとジェイナを、仕えていたお嬢様を、そして僕と言う全てを投げ出したのだ。
そうしなければいけないから…。
だと言うのに目の前にいるこの少女は一瞬でその全てを吹き飛ばしてしまったと言うのか…!
「あっと、勘違いしないでね。これって一時的なものだからさ。根本的解決には全くなってないんだよね。だってもう魂が汚染されかけてるし、
さすがにそこまではできない。お手上げだよ」
「……」
ぽかーん、まさにそんな感じで口を開けながら彼女の方をただ眺める。
「で、一応あたしは誠意を見せたんだけど、そっちはどうなのかなー? シャルロットの意志を無駄にしたくはないんだけど」
顔を寄せる彼女。
僕は驚きにあふれる心を何とか押さえ、聞かなきゃいけない事を聞く事に。
「…えっと、君、いや、貴女はメイガス、でいいんだよね…?」
「んー、正確にはドルイドと呼んで欲しいけど、まあそれでもいいかな?」
え? そこって重要じゃないの? 起源がどこにあるかで全く性質が変わってくると思うんだけど。
彼女は僕のそんな思いを察してか、そんな事はどうでもいいと言った表情で首を横に振った。
「とすると…キャスター…でいいのかな?」
「あ、やっぱり聖杯戦争に関しては知ってるんだね。よかったよかった。いちいち説明するの面倒だし。あとあたしは確かにキャスターだよ。」
言ってる事は正しいと思うんだけど、どこかずれてない?
あ、そのドルイドがぷんぷんと怒ってる。
「いい加減にしてくれないかなー。こっちは一秒だって無駄にできないんだけど」
「あ、うん。分かった。一応マスターになる事がどんな事かは分かってるつもりだけど、僕だけ得してたら損だし」
僕が聖杯戦争に参加する、それはお嬢様に敵対する事につながるかもしれない。
だからって、シャルロットはここまでしてくれたんだ。彼女の意志を尊重したい。
「じゃあ早速契約までの儀式をしようか」
キャスターはそう言いながら準備を開始する。
その動作は、さっきよりもやはり重く見えた。
やる事数分、僕とキャスターとの契約は完了した。
右手の甲には違和感を感じる。お嬢様と同じようにそこに令呪があるって事なんだろう。
しげしげとそれを眺める僕の顔を興味深げにのぞきこんでくるキャスター。
「じゃあここにあたしは貴女をマスターであると認めますので、これからよろしくね」
「あ…、うん」
深々と頭を下げる彼女に思わずこちらも頭を下げてしまう。
いくら相手がサーヴァント、こちらがマスターでも相手の方がはるかにすぐれているんだからしょうがない。
「ところでキャスター、よければ名前を聞かせて欲しいんだけど」
「真名?まあ確かに知っていた方が戦術としてはいいかも…」
「いや、ただ名前を知りたいだけ。こっちも名前で呼んで欲しいし」
「……。」
ああ、この人何いってるんだろ風の目つきをするのはやめてくださいー…。
「真名はニムエ」
「二ムエ!?」
これ本当なのか? 二ムエって言ったらあのアーサー王にエクスカリバーを授けた湖の貴婦人…。
「ああ、違う違う。その二ムエじゃあないよ」
「え?」
違うのか?だってそれだと…。
「あくまで授けたのはマーリンで、あたしはその愛人でもあり、弟子でもある。大体そっちのじゃあドルイドじゃないじゃん」
「あ」
確かに。ドルイドはケルト人の神官だ。だと言うのに湖の貴婦人じゃあ確かにおかしい。
あれ? でも二ムエはドルイドではなくて、巫女だった気もするけど…。
それでも凄腕の魔術師である事に変わりはないけど。
とするとさっきの宝具はクラズノ・アイジンの大釜、ディウルナハとか単に大釜とか呼ばれてるやつか。
ケルトの物語のよく出てくる、魔法の釜。それは万能の物とも呼ばれていて、ここの聖杯戦争にも少なからず影響を与えている。
そんな本物を彼女は所有している。
ではダーヴェル達は大釜の騎士なのか?
「じゃあ今度はそっちだよ、マスター」
「あ、うん。僕の名前は…」
こほん、とせきをして間をつくり、自分の名前を述べた。
「僕の名前はディートリッヒって言うんだ。ディートって略してくれていいよ」
「さっきソウマってやつには本名で言ってたじゃないか」
う、ニムエがこっちを睨んでくる…。
僕より背は低いけど、怖い。
「あれは相手に攻撃させるために言ったもの。確かに僕はアインツベルンの者だけど、アインツベルンのマスターは僕じゃあない。
だから名のる事は…」
「いいの! 君はディートリッヒ・フォン・アインツベルン! それで決まりね!」
強引でしょうそれは。
「でも…」
「でもはなし! 君がアインツベルンのマスターを大事にするのはいいけど、君だってアインツベルンなのに変わりはないんだから!」
「……」
確かにそうかもしれない。そうかもしれないけど…
それでも僕はアインツベルンの名は名乗りたくない。
アインツベルンは、お嬢様にのみ許された名なのだから。
「ま、どっちでもいっか。あたしはそう思ってるからね」
…それならそうともっと早く言ってくれればいいのに。
「さて。じゃあディート、これからよろしくね」
「ええ、よろしく」
彼女が差し出した手を僕は握る。
本当は話さなきゃいけない事もあるんだけど、今は彼女の小さい手を握っていよう。
この弱弱しいけれどもピンク色に染まった、でも神秘的なその手を。
はっきり言ってこの先僕に何が待ち受けているかはわからない。
確かに言えるのは、僕はもう引き返せない所に来てしまったと言う事だ。
「で、二ムエ」
「ん? どうしたの?」
改めて僕はきりだす。正直これを逃して聞く暇があるかどうか。
「そっちの戦士、ダーヴェルの方は分かったけど、もう1人の名前は?」
「あ! 他の置いてきた戦士を回収しないと!」
そういうとニムエはあわてて大釜を取り出して、何やら呪文を唱える。
そして、すぐにため息を吐いた。
「…あーあ。千人も用意したのに結局回収できたのは三分の一切っちゃったよ」
「それだけ残ってたら十分だと思うけど…」
相手はあのランサーだし。
「もしかしてそれって有限? 死ぬと二度と使えないとか」
「いや、マスターである君の魔力さえあればまた大軍で出す事もできるよ。大釜に関わった人なら千人まで」
「それってすごくない? マーリンとかアーサーも呼び出せるんでしょう?」
「あー…」
残念そうにニムエは頭をかく。
ごめん、ちょっとかわいいと思った。
「確実に英雄として扱われるような強い存在は無理みたい。せいぜい呼び出せてもそこにいるギャラハッドのレベルぐらい」
「ギャラハッド! って事は円卓の騎士のほとんどを呼び出せるの!?」
円卓の騎士全員を呼び出せるんだったら、よほどの敵でない限り無敵じゃないか!
が、そのニムエはしぶい顔をしている。
「呼び出さないからね。第一ランスロットとかもう一人のギャラハッドクラスは呼べないし、呼びたくもないし」
「ランスロットは呼ばないでくれよ!」
とダーヴェルはいきなり怒鳴る。
何かあったのか?
「じゃあさっきの指揮官最後の1人は…」
「サグラモール、だっけ? ダーヴェルが出してくれっていうからしょうがなく。知名度が低い低い…」
…本人聞いてたらすっごく泣くだろうなー。
「ダーヴェルにギャラハッド、敵は近くにいないし、こっち来なよ」
と言われると2人とも持っていた剣をしまい、こっちに歩いてくる。
「ギャラハッドさん」
「呼び捨てでいいよ、マスター」
向かってくるギャラハッドは僕の呼びかけにそう言うけれど、なんか遠慮しちゃう。
「さっきはどうもありがとう」
「いや、私が言いたかった事を言っただけだから、役に立っただけでも嬉しいよ」
ギャラハッドはそう言って不敵に笑った。
男、それも戦士にしかできないようなものだ。
そして、3人は僕の前に並ぶ。
そして…、
「それじゃあディート、あたしはこの杖と知識にかけて」
「俺はこの剣と盾にかけて」
「私は剣と自らの信念にかけて」
「「「貴女に聖杯を授けると誓おう!」」」
その言葉が、どんなに嬉しかった事か。
聖杯をくれる点ではなくて、彼女たちがこんなに僕を思ってくれた事が…。
気づいたら僕はまた涙していた。
それは当分涸れそうにない。
to the next stages…
どうも、シロトです。
やっとふりだしに戻りましたよ…。またしても長かった気がしてなりません。
では本編について…
ランサーの正体はまだ秘密です。皆さんの予想が外れる事を祈ってます。
マスターは遠坂にしました。これで2つがそろったので、後はマキリですが…当分先になりそうです。
宝具は大釜以外は効果も名前も何のひねりもありませんね…。そこはすみません。
それでは2日目に。
2006年6月12日
2006年11月26日 双魔の口調を変更